第11回 日本フットボールリーグ 後期第3節 FC町田ゼルビア vs. ガイナーレ鳥取
日時:7月19日(日) 13:00 KICK OFF 会場:町田市立陸上競技場 入場者数:3,861人 天候:曇 気温:34.8℃
■試合記録 FC町田ゼルビア 1-0 ガイナーレ鳥取
スターティングメンバー GK 30修行 DF 22森川 6中川 26深津 2津田 MF 24大前 8石堂 15柳崎 11酒井 FW 10蒲原 14山腰
リザーブ 1渡辺 5山崎 18李 16金 13飯塚 19大江 28吉田
得点 11分 森川
途中交代 71分 金(←大前) 80分 飯塚(←蒲原) 89分 李(←柳崎)
警告・退場 63分 警告 修行 67分 警告 中川 |
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ゼルビア史上最多の3,861名が来場 大盛り上がりのスタジアム
JFLは、全18チームが、ホーム&アウェイ、総当たり2回戦を戦うリーグ戦。順位を決めるのは、毎試合の積み重ね。言うまでもなく、重要ではない試合など一つもない。 ただ、リーグ戦を戦っている最中には、どうしても「重要な試合」「絶対に勝利が求められる試合」と呼ばれるものが生まれてくる。 7月19日(日)、町田市立陸上競技場で行われたこの試合は、ゼルビアにとって、まさしく「それ」だった。 しぶとい戦いを見せながらも、思うように勝ち点を積み重ねることが出来なかった前期リーグ。集客面でも、苦戦が続いた。 後期リーグでの巻き返しを誓って立ち上げられたプロジェクト「7.19町田倍増計画」。クラブとしての魅力、スタジアムの魅力を倍増させることで、ファンやサポーターを倍増させたい。それによって勝ち点も倍増させてJリーグに昇格したい。そんな想いが込められた計画だった。 サポーターやボランティアスタッフ、それに選手も先頭にたって、町田駅・鶴川駅周辺でチラシの配布やポスター掲示活動を行った。鶴川駅からはスタジアム直通の無料シャトルバスが運行開始された。サンリオピューロランドからは、人気キャラクターのバッドばつ丸くんをゲストとして呼んだ。 そして、クラブ史上最多の3,861名が野津田に集った。 一つ目の課題は、一定の成果を収めた。 多くのサポーターが埋める観客席が、メッセージを発していた。 「あとは任せた! 絶対に勝ってくれ!」 選手入場を控え、ロビーに集まるゼルビアの選手たち。 「行こうぜ!行こうぜ!」 そう叫んで、ピッチに飛び出していった。
Jリーグ準加盟対決 ホーム第3ラウンド
対戦相手のガイナーレ鳥取は、ゼルビアと同じくJリーグ昇格を目指す、Jリーグ準加盟クラブ。所属するほとんどの選手が、Jリーグ所属経験がある。現在、準加盟クラブ最高の3位につける強豪だ。前期16節から後期1節まで4連敗を喫したが、前節では、ジェフリーザブズを5−0と一蹴した。 対するゼルビアは、後期開幕後、今季初の2連勝。前節は、攻撃陣が爆発し、アウェイながら流通経済大学に4-1で勝利をおさめた。FW山腰のケガからの復帰や、蒲原、柳崎の活躍などもあり、攻撃陣が調子を取り戻して来ている。 前節、攻撃陣が躍動したチーム同士の対戦となった。
石堂のコーナーキックが、森川の頭に吸い寄せられた 試合は、序盤からお互いが持ち味を発揮し、攻撃の形を披露する緊迫感のある展開。ゼルビアは、最前線に張る山腰を中心に、蒲原、柳崎、酒井などがめまぐるしく前線に飛び出しチャンスを作る。鳥取は、FWのハメドのボールキープ力を活かした攻撃や、サイドチェンジを駆使したサイド攻撃などを活路にゼルビアゴールに迫った。 この日のファーストシュートは、前半2分、蒲原のミドルシュート。右サイド高い位置でボールを受けた柳崎が、後方に位置する、攻撃参加した森川にパス。森川が近くで待つ蒲原にボールを渡すと、蒲原はそのまま中央にドリブル。対面するDFを引き離し、ペナルティエリア手前から左足でミドルシュート。しかし、これはワクを外れてしまった。 前半7分、右サイド深い位置でボールを受けた蒲原が、後方にいる、攻撃参加した森川にパス。森川が、GKとDFの間のスペースを狙って走り込む中央の柳崎に向かってクロスを送ったが、これはわずかに合わず相手GKにキャッチされてしまった。 前半10分、左サイドに空いたスペースを狙い攻撃参加したSBの津田が、サイドチェンジを受けて、ドリブルで相手陣内へ侵入。中へクロスを送ったが、これは相手選手に当たりコーナーキックとなった。 この日、最初のコーナーキック。ボールをセットするのは、この日、先発に返り咲いた石堂。ゴール前では、もはやお馴染みの光景になった、深津、中川、森川が体を近づけて話し合いが行なわれていた。石堂の左足によって、ゴールから遠ざかるカーブがかかったボールは、中川の頭の上を超えて、ファーサイドからニアサイドに向かって斜めに飛び込んだ森川の頭へ。「今シーズン、何度も石堂からドンピシャのボールが来ていたのに決められなかった。首を振ったりだとか、難しいことはせずに、ボールを真っ直ぐ当てようと心がけていた」という森川のヘッドが、相手GKの手をかすめてゴールネットに吸い込まれた。吠える、森川、すぐさま味方選手にもみくちゃにされた。昨年の地域リーグ決勝大会の決勝ラウンドでもゴールを決めている。自ら「ゼルビアの宴会部長」と名乗る森川が、大舞台で強いことを証明してみせた。 3,861名が祝うゼルビアのゴール。会場は大歓声に包まれた。
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photo/Takuo ABIKO |
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Photo/Kohichiro YAMADA |
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蒲原のループーシュートがバーを弾く!
先制点を奪い、俄然、勢いに乗るゼルビア。前半15分には、またしてもビッグチャンス。ルーズボールに体を投げ出してスライディングで飛び込んだ酒井が、相手選手と激しく交錯しながらも、蒲原へ縦パス。パスを受けた蒲原が、反転してペナルティエリア内にドリブルで侵入。相手DFを引き離し、GKと一対一に。右サイド深い位置のため、角度はない。さらに、目の前には相手GKが迫っている。蒲原が選択したのはループシュートだった。GKの頭上を越えて、ファーサイドへ。ネットに吸い込まれるかに見えたが、惜しくもバーに当たってしまった。さらに、そのこぼれ球に猛然と飛び込んだ柳崎が、シュート狙ったが、これはワクを外れてゴールならず。決定的なチャンスを逃してしまった。 前半26分には鳥取の反撃。ペナルティアエリア右角あたりでボールを受けたハメドが、中央に切り返してマークを外し、ニアサイドへ左足の強烈なシュート。これは修行が防ぎ阻止。37分にも、右サイドからの正確なサイドチェンジを受けた鳥取の奥山が、巧みなトラップで前を向きフリーでゴール前へ侵入。タイミングよく前に出た修行が、相手の足下に飛び込みシュートを防いだ。古巣・ガイナーレ鳥取との対戦に、闘志みなぎる修行。集中したプレーでピンチを救った。
球ぎわで踏ん張り、高い位置で何度もボールを奪う
この日の気温は、公式記録では34.8℃。日差しは少ないものの、ひどく蒸し暑かった。当然、時間が進むにつれて両チームの選手の運動量は減っていった。そんな中、光ったのが、ゼルビアの前線の選手の守備の意識だった。「鳥取はサイドバックが高い位置にはり出すため、センターバックとアンカーのポジションの選手がビルドアップの時に孤立することがある。そこを狙おう。」という戸塚監督の指示を忠実に守り、前線の選手が高い位置で何度もボールを奪った。相手GKに下げられたボールにもしっかりとプレッシャーをかけ、ミスを誘発させた。相手に逃げられてもボールを追い続けた。ようやく追い込めば、体をぶつけ、例えバランスを崩して手を地面についても、まだボールに食らいついた。この試合にかける気持ちが伝わってくるプレーに、観客席からは何度も大きな拍手が起きた。 |
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photo/Takuo ABIKO |
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後半も一進一退の攻防 両チームがチャンスを演出
後半も、序盤からお互いがゴールチャンスを作る白熱した攻防。 後半3分、右サイド深い位置でボールを受けた山腰がニアサイドへシュート。これは相手GKに防がれコーナーキックへ。そのコーナーキックを頭で合わせた森川が、中へ折り返し。フリーで待っていた大前がダイレクトでゴールに押し込もうとしたが、上手くミートできずゴールのワクを超えてしまった。 後半5分には、鳥取のチャンス。右サイドからの正確なサイドチェンジがハメドに渡り、ミドルシュート。これはワクを外れて失点を免れた。 後半11分にも、鳥取のチャンス。またしても右サイドから左サイドへサイドチェンジが渡り、ゴール前へクロス。中で鳥取の奥山が飛びこんだがわずかに合わず、ことなきを得た。 後半24分には、ゼルビアのチャンス。クロスボールのこぼれ球をペナルティエリア左サイドで拾った山腰がボレーで中へ折り返し。中央で待つ蒲原にボールが渡ったが、シュートを撃つ前に相手DFに潰されてしまった。
鳥取の猛攻を、修行が意地のセービング!
後半も半分を過ぎたころからは、徐々に鳥取がゼルビアゴールに迫る回数が増えて来た。とにかく得点するしかない鳥取は、早い時間帯に次々と攻撃的な選手を投入し、攻勢に出た。 するとゼルビアは後半26分に大前に代えて金を投入。後半35分には、蒲原に代えて飯塚を投入。「1点をリードしたまま終盤を迎えて、体力的に消耗してきたこともあり、バランスを崩さないために前に出て行かないというプレーに徐々に変わって来ていた。それでは、どんどん相手のペースになってしまう。守るだけではなく、前線を活性化させて、ゼルビアのペースの時間帯も増やさないとやられてしまう」という戸塚監督の意図のもと、交代で入った二人は積極的に動き回った。 鳥取も意地の猛攻。終盤には立て続けにシュートを放ったが、ことごとく修行が防いだ。後半37分には、コーナーキックのこぼれ球を、ハメドが強烈なボレーシュートを放ったが、修行が体にあててファインセーブ。決定的なピンチを体を投げ出して防いだ。 長く感じたロスタイムの3分間も消化し、野津田にゼルビアの勝利を告げるホイッスルがなり響いた。大歓声に沸くスタジアム。ピッチでは、渾身のガッツポーズをするもの、グラウンドに座り込むもの、選手たちが、さまざまな姿で勝利への喜び、安堵感を表していた。 無失点に大きく貢献した修行は、色々な想いが去来したのか、大粒の涙を流していた。「個人的な感情だが、やはり、古巣への対戦に特別な想いはあった。今年の春、ゼルビアに移籍した時から、鳥取を倒すことを目標の一つにしていた。自分は鳥取に育ててもらったという意識が強い。今日は、恩返しができたと思う。」 |
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photo/Takuo ABIKO |
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Photo/Kohichiro YAMADA |
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後期開幕3連勝 いよいよ「4位以内」が近づいてきた
これで、リーグ全18チーム中、唯一の後期開幕3連勝。もちろん後期の首位。勝敗は、8勝5分7敗となり、勝ち越しとなった。 「特に重要な試合」で見事勝利を果たしたゼルビア。やはり、この1勝はとても大きいが、選手たちはもう次の試合を見据えている。 「確かに、鳥取を倒し3連勝を果たしたことは大きな自信になる。でも、まだ何も成し遂げてはいない。Jリーグに昇格するために、停滞が許されない状況には変わりはない。次の一戦だけに集中して毎試合戦っていく」。試合の後の会見では、森川と修行が口を揃えて同じ発言をした。その目には、自信が漲っていた。
Jリーグ昇格条件の4位との勝ち点差はわずか「4」。「Jリーグ」が近づいてきた。さらなる「町田倍増計画」へ。町田の夏はこれからはじまる。 |
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リリース掲載日:2009年7月21日 |